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#2002.10
ATP合成酵素の触媒反応に伴う分子の動きの実時間観察と回転の解析


  すべての生命は、ATPをエネルギーの通貨として使用しています。ATPを加水分解して得られるエネルギーをさまざまな仕事に利用しているので、例えばヒトは1日にほぼ体重と同じ重さのATPを合成しています。この莫大な量のATPを合成するのは、ATP合成酵素と呼ばれるタンパク質複合体で、呼吸や光合成によって生体膜の袋(細菌の細胞膜、ミトコンドリアの内膜、植物の葉緑体のチラコイド膜)の内側と外側の間に生じる水素イオン(プロトン)の濃度差をエネルギー源としてADPとリン酸から高エネルギー化合物であるATPを作り出す、いわばエネルギー形態の変換装置です。生物資源部門では、この酵素の構造とこれまでこの酵素について提案されてきた反応モデルを基にして、一分子のタンパク質の回転運動を蛍光顕微鏡下で可視化するという実験に成功しました(Nature 388, 299-302 (1997))。
  実験では、酵素をガラス基板に固定した後、酵素の回転部分に蛍光標識した別のタンパク質(左図の赤いタンパク質)を接続し、ATP(図の紫で表示した物質)を逆反応で加水分解するのにともなう軸部分(青で表示)の動きを顕微鏡観察しました(左図は実験の概念図、右図は実際に観察した蛍光繊維の顕微鏡写真)。そして、この酵素の軸部分のタンパク質が酵素の触媒反応に伴って左回りに回転するというユニークな動きをしていることを明らかにしました。この回転を詳細に解析することで、ATP合成酵素の触媒作用の分子機構が明らかになりつつあります(Nature 410, 898-904 (2001), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 13649-54 (2001) 他多数)。

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