サブナノ粒子の物性評価


物質がナノスケール(10-9倍)にまで小さくなると、その性質が著しく変化することがあります。金閣寺やツタンカーメンのマスクのように、本来、金はいつでも黄金色を示しますが、ナノスケールにまで小さくした金の微粒子は赤紫色に見えます。1856年にMichael Faradayによって合成された金の微粒子はルビー色をしており、物質の大きさと光学特性の関係を明らかにした最初の実験結果の一つです。
本研究室では、独自に開発したデンドリマー分子を鋳型とした金属精密集積法を駆使することで、構成原子数・元素組成比を精密に制御したサブナノサイズの金属微粒子を作り分けることに成功しました。さらにこれら量子サイズの新素材が、私たちが知っているバルクの性質とは異なる、全く新しい物性(導電性・光学特性・磁性・触媒活性)を発現すること、さらにはその物性が構成原子数・構成元素組成比によって離散的に変化することを見出しました。
サブナノスケールの新素材開発を展開する上で、その物質群の基本物性を理解・解明することが必須です。しかしサブナノスケールという極端に小さい物質群を分析・検出すること自体が、既存の分析装置では困難です。そこでサブナノスケールの物質群を検出・評価できる高感度な分析手法を開発研究しています。さらに理論計算を用いた最適化構造・基本物性解析を組み合わせることで、発現する特異的物性の原理的な原因究明を目指しています。
160年以上経った今でも、Faradayのルビー色水溶液は、その鮮やかさを失っていません。我々はこれからの未来を切り開く新しい物質群の"色"を研究しています。