熊田誠先生を偲ぶ会(2007年9月8日)

 去る6月28日に逝去された熊田 誠先生を偲ぶ会が京都で開催されました。200人以上の方々が参加されました。いくつか貴重な遺品が展示されていたので写真を撮ってきました。

サンプル(1, 2) 熊田先生は有機ケイ素化合物の工業的合成法 である直接法の蒸留残さにSi-Si結合を含むオリゴシランが含まれていることを、残さをグリニャー試薬でメチル化して蒸留し、ヘキサメチルジシラン(Me3Si-SiMe3)を単離することにより証明されました。1953年のあるとても寒い冬の朝に蒸留し112℃の留分が蒸留塔の端の方で結晶化したのをご覧になった時ヘキサメチルジシランが生成したことを確信されたそうです。ヘキサメチルジシランは既知化合物ではありましたが、それまでは少量しか得られなかったためその科学を研究することは不可能でしたが、この方法で大量に得られたことから、Si-Si結合を含むポリシランの化学が大きく進展しました。これらのサンプルは熊田先生がご自身で合成、封管されたものです。この蒸留の話は何度もうかがいましたが、ご自身もエッセイ(pdf)として書き残しておられます。

ノート 講義の板書や講義資料を非常に几帳面な字で 書かれる先生でしたが、研究ノートも同様だったようです。最初のノートは1940年頃のノートで、当時はコピーがありませんでしたから、論文をすべて手書きで写されたようです。開かれたページは 有機ケイ素化学の父とよばれるKippingの論文でした。2冊目のノートは1970年代のものです。

賞状 上記のご業績に対して1994年に学士院賞・恩賜賞を受賞され、その20年以上前の1967年にはアメリカ化学会のKipping賞を 受賞されました。Kipping賞は上記のKippingを記念した有機ケイ素化学に貢献の大きかった化学者に送られるアメリカ化学会の賞の一つで、熊田先生は日本人ではじめてアメリカ化学会の賞を受賞された先生だったそうです。知りませんでした。