東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所

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受賞・プレスリリース

  • 2025.05.09

独自の深層学習モデルによる蛍光免疫センサーの高性能化

東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所の北口哲也准教授と朱博助教、生命理工学院の井上暁人大学院生(研究当時)らの研究チームは、同工学院の小林健准教授と米国カリフォルニア大学アーバイン校のChang C. Liu教授と共同で、蛍光免疫センサーを高性能化させる独自の深層学習モデル「NanoQ-model 1.0」を構築しました。

標的分子を検出できる免疫センサーは、環境調査や食品分析、医療などで不可欠です。しかし、高感度なセンサーの開発には膨大な試行錯誤が必要で、数ヵ月を要していました。本研究では、深層学習を利用して構築した分類モデルにより、このプロセスをわずか数日に短縮することに成功しています。

今回の対象はクエンチ抗体(Q-body)と呼ばれる蛍光免疫センサーです。Q-bodyは、抗体のN末側が蛍光色素で標識されており、抗原が結合すると蛍光色素のクエンチ(消光)が解除され、蛍光が上昇します。したがって、蛍光色素が強く消光する抗体ほど大きい蛍光応答が期待できますが、この消光効果は抗体ごとに異なり、予測が極めて困難でした。

研究チームは、酵母を用いたスクリーニングによって、消光効果を基準にして抗体ライブラリーをFACSで分類し、それぞれのプールを次世代シーケンス解析したのち、アミノ酸配列を使ってタンパク質言語モデルProtBert-BFDを再学習させ、高性能なQ-bodyとなるアミノ酸配列を予測できる独自モデルを構築しました。このモデルを新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に結合する抗体で検証したところ、予測された変異の8割以上で消光が強まり、検出感度の向上も確認できました。

このモデルの誕生により、免疫センサー開発が飛躍的に加速するだけでなく、将来的にはアミノ酸配列だけで目的の機能を持つかどうかの見極めが可能となり、タンパク質エンジニアリングの新たな可能性を切り拓くと期待されます。

本研究成果は、2024年2月9日付の「JACS Au」誌にオンライン掲載されました。

論⽂情報

●掲載誌 JACS Au
●掲載日 2025年2月9日
●著者 井上暁人・# 朱 博・# 水谷圭佑・小林健・安田貴信・Alon Wellner, Chang C. Liu・北口哲也*
●タイトル Prediction of Single-Mutation Effects for Fluorescent Immunosensor Engineering with an End-to-End Trained Protein Language Model
●DOI 10.1021/jacsau.4c01189

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