東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所

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受賞・プレスリリース

  • 2025.05.12

パーフルオロ化合物を捕捉する分子カプセル

本研究所の加井うらら大学院生(修士課程2年)と吉沢道人教授らは、独自の分子カプセルを活用することで、水中でパーフルオロ化合物を高効率かつ高選択的に捕捉することに成功しました。

パーフルオロ化合物は一般的な有機化合物と異なり、フッ素原子に由来する特徴的な性質を示すことから、材料や医薬などの分野で注目を集めています。しかし、その分子レベルでの相互作用には未解明な点が多くあります。また、従来の分子カプセルやケージでは、これらの化合物に対する捕捉力は低く、混合物からの回収や分離などの有効な方法は未開発でした。

そこで本研究では、芳香環パネルで囲まれたナノサイズ空間を有し、骨格の微調整が可能な分子カプセルを利用することで、パーフルオロ化合物の選択的な捕捉と相互作用の解明を目指しました。まず、白金イオンを骨格に含む分子カプセルが、水中・室温の条件で、パーフルオロ芳香族分子と類似のパーフルオロ脂肪族分子の混合物中から、前者を100%の効率および選択性で捕捉することを見出しました。また、同カプセルの内部骨格の一部を窒素に置換することで、大きさの異なるパーフルオロ芳香族分子の選択的な捕捉を達成しました。さらに、金属イオンをパラジウムに置換した同じ構造の分子カプセルを用いることで、パーフルオロ脂肪族分子の長さと形状の識別による100%選択的な捕捉にも成功しました。最後に、結晶構造と理論計算による精密な相互作用解析により、パーフルオロ化合物の捕捉メカニズムを解明しました。

本研究成果は、米国化学会が出版する注目の学術雑誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に3月18日付で掲載されました。

論⽂情報

●掲載誌 Journal of the American Chemical Society
●掲載日 2025年3月18日
●著者 加井うらら、角田瑠輝、田中裕也、吉沢道人*
●タイトル Discrimination of Perfluorinated Arenes/Alkanes by Modulable Polyaromatic Capsules
●DOI 10.1021/jacs.5c00904

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プレスリリース パーフルオロ化合物を捕捉する分⼦カプセル −100%の効率・選択性とその機構解明−(PDF)
吉沢・澤田研究室


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