受賞・プレスリリース
- 2025.06.27
100 nm球状多空間ポリマーの水溶化に成功
本研究所の青山慎治大学院生(博士後期課程3年)、ロレンツォ・カッティ助教と吉沢道人教授は、独自のカプセル化の手法で、超巨大(約100 nm)で多空間を持つ球状ポリマーの水溶化と分離、その空間活用に成功しました。
一つの内部空間を持つ化合物が、分子を捕捉する性質は幅広く利用されています。一方、多数の空間を持つ固体材料の捕捉能は注目されていますが、未開拓な部分が多く残されています。特に、芳香環骨格からなる多空間ポリマーは、高い安定性のガス吸着・分離材料として研究されていますが、どのような溶媒にも溶けないため、固体でしか活用されてきませんでした。本研究では、このような芳香環多空間ポリマーを内包により簡便に水溶化するとともに、溶液中でその空間機能の開拓を目指しました。
まず、超巨大な固体材料である約100 nmサイズの球状多空間ポリマーと芳香環ミセルの部品である湾曲型両親媒性分子を作製しました。これらを固液中で混合することで、芳香環ミセルによるカプセル化で、多空間ポリマーの効率的な水溶化を達成しました。溶解した内包ポリマーは、遠心分離によりサイズごとに分離できました。また、その多空間は溶液状態で、高い分子捕捉能を示しました。水中での撹拌で、大量のアルカンが捕捉され、それに伴いポリマー骨格に由来する発光が向上しました。さらに、色素分子とアルカンの同空間での捕捉で、色素に由来する強発光の誘起に成功しました。これらの成果は、前例のない超巨大な固体材料の新活用法を示すものであり、今後、溶液中での特異な多空間機能の発現などが期待されます。
本研究成果は、Cell Pressの注目の学術雑誌「Chem」のオンライン版(オープンアクセス 6月2日)に掲載されました。
論⽂情報
●掲載誌 | : | Chem(Cell Press) |
●掲載日 | : | 2025年6月2日 |
●著者 | : | 青山慎治・Lorenzo Catti*・吉沢道人* |
●タイトル | : | Aqueous Polycavity Hosts Composed of Porous Aromatic Polymers within Aromatic Micelles |
●DOI | : | 10.1016/j.chempr.2025.102616 |
関連情報
■ | Science Tokyo ニュース | : | 100 nm球状多空間ポリマーの水溶化に成功 |
■ | プレスリリース | : | 100 nm 球状多空間ポリマーの⽔溶化に成功 −内包により固体材料の分離と活⽤が可能に−(PDF) |
■吉沢・澤田研究室 |