東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

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  • 2021.02.08
  • 野村研究室

非水熱条件でのNaNbO3ペロブスカイトの簡易合成

 一般式ABO3で表されるペロブスカイト型複合酸化物は図1に示す様な構造からなり、強誘電体や圧電素子として実用化されている無機材料群で、さらなる機能性の向上のために、結晶相や粒子形状の制御が求められています。一方でそれらの合成には、固相法、水熱合成法、アルカリ溶融塩法、メカノケミカル合成法など、高いエネルギーの投入や厳しい条件が必要です。より温和な条件での合成が可能になれば、構造や形状などの容易なコントロールを期待することができます。今回、多くの結晶相を有しそれらが複雑に転移するため、まだ相図が明らかになっていないNaNbO3ペロブスカイトが、「アルカリ溶液中での攪拌と空気中での焼成」(図1)という穏やかな条件で簡易的に調製できることが分かったので紹介します1)

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図1 非水熱条件での NaNbO3 の合成と正方晶型ペロブスカイトの結晶構造

 始めに2.0 mol·L-1のNaOH水溶液50 mLにアモルファスNb2O5を1.5 g入れ1-24時間攪拌しました。その際に得られた白色粉末を濾過・洗浄・乾燥して試料(S:固体)を得ました。これは通常の10.0 mol·L-1以上の濃度のNaOH水溶液やNaOHアルカリ溶融塩を用いる方法に比べて、遥かに温和な条件です。また別途、濾液を水で希釈することで生じた沈殿を回収し、試料(L:液体)を得ました。それら試料のX線回折(XRD)パターンが図2(左)で試料の回収率が図3になります。まず、試料(S)の初期回収率は40 %未満で、6時間での再結晶試料(L)が急激に増加していることから、反応初期に原料のアモルファスNb2O5の溶解が起きていることがわかります。この時の試料(S)のXRDパターンは10 °付近にアモルファルハローが観られ結晶化していない一方で、試料(L)では再結晶により回折ピークを持った結晶体が形成していることがわかります。試料(S)はさらに反応時間が長くなると次第に結晶性が良くなり10-15 °にピークを生じますが、48時間の反応で再びアモルファス体となり、溶解することが図3からもわかります。なお、試料(S)と試料(L)で見られた結晶体の構造は、Na2Nb2O6·H2O2)やNa7(H3O)Nb6O19·14H2Oおよびその無水物3, 4)への帰属を確認中です。

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図2 アモルファス Nb2O5 と NaOH 水溶液の反応で得られた試料の XRD パターン反応時間変化

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図3 アルカリ処理時間に対する試料の収率変化

 これら、室温でNaOH水溶液中での攪拌で得られた試料を空気中500 °Cで焼成すると、図2(右)の様に結晶化が起こり、いずれも正方晶NaNbO3になることがわかりました。すなわち、アモルファスNb2O5をアルカリ処理することで、アモルファス体や種々の結晶体が前駆体として得られ、焼成するだけで正方晶NaNbO3を得ることができました(図4)。さらに、試料(L)の形状は走査型電子顕微鏡像(図1)に示した様に棒状結晶で、より穏やかな条件での合成によるペロブスカイト試料の形状制御の可能性を示唆しています1)

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図4 NaNbO3 ペロブスカイト形成の推定機構

 今後、本手法を用いて他のアルカリあるいはアルカリ土類金属と遷移金属の組み合わせからなるABO3ペロブスカイト酸化物の合成範囲を検討するのに加えて、様々な前駆体形成やそれらのペロブスカイト相への相転移など、合成反応機構についてさらに詳しく調査する予定です。

参考文献

1) R. Osuga, Y. Hiyoshi, T. Yokoi, J. N. Kondo, J. Sold State Chem., 295 (2021) 121891.
2) W. Mu, X. Li, G. Liu, Q. Yu, X. Xie, H. Wei, Y. Jian, Dalton Trans. 45 (2016) 753-759.
3) S. Yamazoe, T. Kawawaki, T. Imai, T. Wada, J. Ceram. Soc. Jpn. 118 (2010) 741-744.
4) S. Yamazoe, K. Shibata, K. Kato, T. Wada, Chem. Lett. 42 (2013) 380-382.

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