東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

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最新の研究

  • 2016.08.01
  • 小坂田・竹内研究室

含ケイ素芳香環が連結した高分子の合成反応とσ、π共役
小坂田・竹内研究室

 高分子化合物のほとんどは、その骨格が炭素―炭素結合から形成されており、多彩な機能を有する材料として用いられています。ケイ素―ケイ素結合を主鎖に有する高分子「ポリシラン」は、ポリマー鎖が剛直であること、ケイ素―ケイ素結合のπ共役に由来する光学的性質をもつこと、等の特徴から、光導電性を示し、新しい材料物質として位置づけられてきました。ポリシランを合成するクリーンな方法として、遷移金属錯体を触媒とする有機シラン(R2SiH2, RR'SiH2, RSiH3 etc)の脱水素重縮合反応が知られています。しかし、従来用いられてきたチタン触媒は二級シランの重合には活性が低く、新たな合成反応の開発が期待されてきました。

私たちは、ニッケル錯体触媒を用いる有機シランの重縮合を検討し、新構造をもつポリシラン、新しい形の分子量制御、重合反応機構についての新しい発見、に成功しました。

1) 環状中間体を経由するポリシラン生成反応

ニッケル触媒を用いる二級シランの重縮合では、環状及び鎖状(非環状)ポリシランが生成することがわかりました。反応条件を整備するとどちらかを合成することも可能です。反応系を丁寧に検討し、かつ白金を用いたモデル錯体をあわせて検証することにより、以下の反応がポリシラン成長をドライブしていることがわかりました。環状のオリゴシラニッケル中間体が生成し、これが単量体の付加による、開環、開環体のオリゴシリル基へのケイ素挿入(分子量増加)、閉環、を経由してポリシラン生成物を与えます。

図1

図1 環状ポリシラン合成と重合中間体のメタラサイクル

この結果は、ニッケル触媒が単一活性種を発生して、重合を促進していることと深くかかわっています。1)

2) シラフルオレンの重縮合反応と生成物―主鎖σ共役と側鎖π共役をもつ高分子―

π共役系分子であるシラフルオレンの重縮合生成物は、電子状態、機能の新規性が期待されていますが、低い反応性、生成物の難溶性のために、研究が進んでいませんでした。ニッケル錯体を触媒に、アルキル置換基を有するシラフルオレンを単量体とすることによって、構造が明確で分子量を制御したケイ素高分子を得ることができました。別途合成した四量体はX線構造解析から、側鎖の芳香環が近接しており、π電子の相互作用があることが示唆されました。実際、吸収及び蛍光スペクトルを、単量体、四量体、ポリシランで比較すると、溶液中でも図2のような構造を有していることが確かめられます。2)

図2

  図2 四量体のπスタッキング、吸収、蛍光の測定結果に基づく
     側鎖π電子の重なり

3)分子量制御可能な新しい重縮合反応

ニッケル触媒を用いるシラフルオレノンの重縮合反応を各種の手段で精査し、その分子量制御の機構の解明を試みました。重合は開放系で発生水素を放出すると、単量体の消費とともに、すぐに停止してしまい、微量の水素存在下、再度閉鎖系で実験を行うと、成長反応が再開しました。

図3

図3 重合系中のEXSY-NMRによる単量体の末端水素交換

図3に示すように、EXSY-NMRによって反応混合物を観測すると、単量体同士、単量体とオリゴマ―の間にすみやかな水素交換がおこっていることがわかり、これらを整理して、オリゴマ―同士の縮合が極めて遅いこと、触媒から単一の活性種が発生し、これがすみやかに単量体とオリゴマ―との反応をおこすこと、が明らかになりました。3)

反応の可逆性などの要因もあわせて、反応全体の機構を解明し、分子量制御の仕組みも明らかにしました。図4に示すように、分子量制御が可能な重合反応はいくつかのタイプに分けることができますが、本重合は、ニッケルから遊離した単量体とオリゴマ―とがケイ素―ケイ素結合を形成して成長が起こるという点で、従来にない新しいタイプの逐次重合反応です。4)

反応の特異性のみならず、生成高分子の構造の特徴を活かした機能開発について現在研究をすすめています。また、シラフルオレンと類似構造のジチエノシロールは、金属錯体によって、重合以外の新規転移反応をおこすこともわかり、電子状態と反応性の関連も検討を進めています。5)

図4

図4 本重合を含む重合反応における分子量制御

文献など
1) M. Tanabe, A. Takahashi, T. Fukuta, K. Osakada, Organometallics, 2013, 32, 1037-1043.
2) M. Tanabe, S. Iwase, A. Takahashi, K. Osakada, Chem. Lett., 2016, 45, 394-396.
3) M. Tanabe, S. Iwase, A. Takahashi, K. Osakada, in press.
4) 一部のリビングラジカル重合は連鎖重合ですが、同じ反応形式に属します。
5) 論文作成中

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