東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

  • アクセス・問い合わせ
  • ENGLISH
  • 所内専用
  • 研究所について
  • 研究室・研究者紹介
  • 情報公開
  • 入学希望者の方へ

化学生命科学研究所ニュース 日本語

  • ヘッドライン
  • 最新の研究
  • 講演会・イベント
  • 受賞・プレスリリース
  • 公募

最新の研究

  • 2017.07.05
  • 山元・今岡研究室

デンドリマーを原子に見立てて重合する

 一般に原子が作ることの出来る結合の本数は決まっており、結合の方向性も結合様式によって規定されている。このように、原子は「価数」や結合の「方向性」を持っていることが大きな特徴である。また、原子軌道は量子化されておりそれぞれの軌道と原子に応じて決まったエネルギーを持っていることが知られている。

 近年、こうした原子の特性を模倣したナノ物質が原子模倣特性(atom mimicry feature)を持つ物質として注目されている1。例えば、数個から数十個の原子からなる金属クラスターはその構成原子数に対応するように周期的に物性が変化することが知られていいる。さらに、超原子軌道と呼ばれるクラスター全体に広がった分子軌道を持ち、ハロゲンや希ガス原子のような電子親和力や安定性を持つことも報告されている2。Tomaliaらはこうした概念を周期的な構造を持つ樹状高分子(デンドリマー)やその他の物質に拡張することを提案している1

 当研究室で開発されたフェニルアゾメチンデンドリマーはそのルイス塩基部位であるイミン窒素に対してルイス酸が錯形成する際に内層から外層へと放射状段階的に錯形成することが知られている3。これはデンドリマーの塩基性が層ごとに量子化されていると見ることが出来る。つまり、フェニルアゾメチンデンドリマーは古典的なボーア原子モデルの原子軌道への電子の充填を模倣していると考えられる(図1)。我々は、このような原子模倣デンドリマーの最内層の原子軌道をつなぐことで通常の原子が連なって高分子を作る「重合」と同じ事が可能なのではないかと考えた。そのため、イミン窒素に配位可能で、かつ有機合成的にデザイン可能なトリフェニルメチリウムカチオン4を両端に持つ直線型架橋分子を合成した。

201707Fig01.png

図1 (Left)Structure of disubstituted phenylazomethine dendrimer.(Right)Stepwise radial complexation as an analog of Bohr atom model.

 この架橋分子のデンドリマー最内層への配位はUV-visタイトレーションによって確認した(図2)。デンドリマー最内層のイミン数と一致するトリフェニルメチリウム数を持つ架橋分子を加えた後に塩化スズ(Ⅱ)溶液を滴下した。滴下に従って3点の等吸収点が確認され、そのシフトに要した塩化スズの当量とデンドリマーの2層目、3層目、4層目のイミン数が一致したことより最内層に架橋分子が、外層に塩化スズが集積されたことが確認された(図2)。

201707Fig02.png

図2  UV-vis spectra during titration of phenylazomethine dendrimer during the addition of 1 eq of the linker followed by 28 eq of SnCl2.

 デンドリマーと架橋分子を混合した後に基板上にキャストし、AFM及びSTM観察を行った(図3)。AFMでは異方性を持った直線分子のバンドルと思われる像が観測され、STMではデンドリマーに対応すると思われる繰り返し構造を持つ直鎖ポリマーの像が得られた。2置換型デンドリマーの構造に対応して直線上のポリマーが得られたと考え、4置換型のデンドリマーを使用するとシート状の構造体が観測された。さらに、この超分子構造体に対して塩化スズを集積しても構造が維持されることが明らかとなった5

 このようにデンドリマーの重合を通した配列とデンドリマー内への塩化スズの取り込みが可能であることが示された。デンドリマーには塩化スズ以外の金属6や疎水性物質などを取り込むことが出来るため、こうした機能性分子の配列にも使えるものと考えられる。

201707Fig03.png

図3 AFM and STM image of dendrimer-linker complex (polymer).

謝辞
本研究は東京工業大学 フロンティア材料研究所 東康男 准教授、真島豊 教授との共同研究として行われました。



1 D. A. Tomalia, S. N. Khanna, Chem. Rev., 116, 2705 (2016).
2 D. E. Bergeron, P. J. Roach, A. W. Castleman Jr., N. O. Jones, S. N. Khanna, Science, 307, 231 (2005).
3 K. Yamamoto, M. Higuchi, S. Shiki, M. Tsuruta, H. Chiba, Nature, 415, 509 (2002).
4 Y. Ochi, A. Fujii, R. Nakajima, K. Yamamoto, Macromolecules, 43, 6570 (2010).
5 K. Albrecht, Y. Hirabayashi, M. Otake, S. Mendori, Y. Tobari, Y. Azuma, Y. Majima, K. Yamamoto, Sci. Adv., 2, e1601414 (2016).
6 K. Yamamoto, T. Imaoka, Acc. Chem. Res., 47, 1127 (2014)

ページトップへ