金属イオンが規則正しく錯形成できる配位サイトを導入した独自の高分子(デンドリマー) [Nature, 415, 509 (2002)] を用い、これを基盤とした様々な機能材料創製を展開しています。金属元素の原子数や組成が精密かつ自在に設計・制御できるようになると、従来の古典的な無機化学では成し遂げられなかった単分散でサブナノメートルオーダーの金属、半導体、酸化物、多元素合金クラスター化合物、いわゆる「精密金属ナノ材料」の化学が拓かれます。燃料電池触媒への応用例として、わずか12個の白金原子からなるサブナノクラスターの精密合成に成功し、既存の白金ナノ粒子触媒 (粒径3 nm) を凌駕する酸素還元触媒能を見出しているほか、世界最小の酸化チタンサブナノドット作成にも成功、これによって発現する量子サイズ効果を世界で初めて直接観測しました。

無機化学という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか?混ぜたり焼いたりすると何かができる化学という印象があるならそれは前世代の無機化学です。無機機能化学という部門名称を冠していますが、私たちが行っている化学は有機分子、高分子の分子設計から始まり、精密合成によって完全に単一な化学構造、組成、ナノ構造を構築、機能材料を創出するという全く異なるアプローチで行います。実際に研究室では有機合成、高分子合成、錯体合成に加えて無機合成も含めたあらゆる化学の手法を駆使して新物質を創出しています。使える元素はC, H, Nなどの有機元素も含めると110種類近くもあります。これだけ種類豊富な元素を原料として精密にナノ構造体を組み上げる精密無機合成化学を確立することで革新的な機能材料の創製を目指します。