研究紹介

研究目標:細胞の生きる仕組みを理解する

 細胞は生命の基本ユニットです。生命現象は複雑で。

  1. シアノバクテリアにおける基本ストレス応答系と相互作用:シグナル伝達と転写制御
  2. ストレス応答と生物時計の相互作用
  3. 光合成環境応答系の進化

 

光合成科学:酸素発生型の光合成はどのように作られたのでしょう?

 今から二十億年以上前、酸素発生型の光合成を始めたのはシアノバクテリアです。この画期的なイノベーションにより地球上に酸素がもたらされ、その後の地球や生物の進化は決定的な影響を受けることになりました。当研究室では、酸素発生型の光合成と共に生まれたと考えられるコアな環境応答系について、その仕組みや進化について研究しています。主にシアノバクテリアを研究材料としていますが、その葉緑体への進化も対象としています。

  1. シアノバクテリアにおける基本ストレス応答系と相互作用:シグナル伝達と転写制御
  2. ストレス応答と生物時計の相互作用
  3. 光合成環境応答系の進化

 

システム微生物学:バクテリアの生きる仕組みを探ります

 生命の基本ユニット:バクテリア細胞の生きる枠組みを、生体エネルギーの獲得システム(I)、その生体エネルギーを用いた生体分子の合成(細胞生長)システム(II)、さらにゲノムを中心とした細胞周期(細胞増殖)システム(III)の3階層として捉え直し、それらの相互作用から細胞のはたらきを理解しようとしています。研究材料としては大腸菌を用いています。細胞の基本の基本の研究は、生命の起源の解明にもつながるはずです。
 

  1. 環境に応じたエネルギー代謝のシステム変換
  2. 代謝と増殖を結びつける仕組みの研究
  3. リボゾームを中核とした細胞制御機構


植物学:植物細胞はどのように生まれたのでしょう?

  植物細胞はシアノバクテリアの細胞内共生により誕生し、それにより光と炭酸ガスに依存した植物固有の生き様が作り上げられました。葉緑体と細胞核の相互作用を基本として、植物細胞が生きる枠組みを原始的な真核藻類:シゾンを用いて研究しています。

  1. 細胞核と共生由来オルガネラの相互作用:環境応答と細胞周期
  2. TORキナーゼと窒素飢餓応答
  3. 細胞質とオルガネラのリボゾーム合成の協調機構
  4. 細胞共生と光シグナル伝達系の進化
  5. 葉緑体の環境応答と小胞輸送

 

藻類バイオマス:光と炭酸ガスから油や多糖を作ります

 単細胞藻類がバイオマスを作り出す環境条件や、そのバイオマスを作り出すスイッチの仕組みを解明し、それを利用して油脂や多糖の過剰生産に向けた研究を進めています。

  1. 真核藻類による油脂や多糖などの有用バイオマスを生産する仕組みの理解
  2. 上記1の理解を基とした有用バイオマス生産性の増強
  3. 藻類バイオマスを余すことなく利用する技術の開発

 

概説(基礎研究編)

  DNAゲノムにコードされた遺伝情報は、転写・翻訳というセントラルドグマに沿って発現し、生命活動を支えています。半世紀も前に発見されたこの大原則に基づいて、現代の生物学は様々な生物機能を明らかにしてきました。生命の基本ユニットである細胞は徹底的に分解され、それぞれのパーツの機能や構造は原子のレベルで解明されようとしています。しかし、どんな細胞でも細胞内には数万の分子種とそれらの相互作用があり、それらの積み上げで生きた細胞システムの全体像は今も捉えられていません。
 
 他方、物理学や化学では多くの法則や原理に基づいて自然現象が説明され、さらに将来の予測や応用に向けた研究がなされています。しかし、これら分野に比べると生物学では、構成する分子群の性質が判ってきたとはいっても、生物に固有の性質の理解はまだまだ未熟です。細胞はどうして増えたり性質を変えたりするのか、どうして老化するのか、どうして気まぐれな性質をもつのかなどの根本的な問いかけに、明快な答えは殆ど見つからないままです。

 私たちは、このような状況の突破には細胞が成立してきた歴史的経緯、つまり「進化」の理解が重要だと考えています。
 
 動物や植物の進化には多くの人が興味をもち、単純な生物から複雑な生物へとつながる系統関係が詳しく解析されています。詳細にまだまだ不明なことは多いにしろ、基本的にはその進化の道筋を辿ることが可能であり、その理解により複雑な生物の基本的な仕組みの解明も格段に進んできています。
 
 細胞も、地球上に突然出現したものではありません。一歩一歩、階段を上がるように長い時間をかけて進化を続けてきました。 細胞には細胞核をもつ「真核細胞」と、細胞核のない「原核細胞」がありますが、これらは無関係に生じたものでなく、原核細胞間での共生により真核細胞は進化しました。さらに、原核細胞も無生物から忽然と生じたのではなく、DNAゲノムをもたず、RNAを中心とした前段階の生物がいたのではないかと言われています。 このように、生物は何段階もの飛躍的進化を経て、階層を上へ上へと積み重ねながら(上位階層の創発)、より複雑なシステムへと進化してきました。原核細胞では、その前段階であったRNA型の生命体は消えることなく、リボゾームを中心とした細胞機能として下から細胞システムを支え続けているようです。さらに真核細胞では、原核細胞システムはミトコンドリアや葉緑体として生き続け、その上にさらに細胞核を中心 としたシステムが付け加えられています。このように、積み上げられた階層構造として細胞システムを考察することで、その複雑さを整理することが可能となります。

 進化を踏まえれば、複雑な細胞をコントロールする隠れた関係性を見つけ出し、適切にモデル化して研究を進めることが可能です。さらに、生物は進化を通じて大きく変化してきましたが、本質的で大切な構造・特徴は余り変化していません。この性質を利用すれば、生物間を比較することで、特に重要なネットワークを洗い出すことが可能となります。このように、進化を過去に起きたことの「年表」としてではなく、今を生きる生物を解く「鍵」とすることで「細胞」の理解を目指すのが私たちの研究戦略です。
 
 原核細胞の誕生(細胞生命の起源)、酸素発生型光合成の誕生、真核細胞の誕生、植物の誕生、これらはどれも生命の歴史の間にただ一度しか起きなかった、いわばシンギュラーなイベントであり、 その後の生命の進化を決定的に変えるような結果をもたらしました。私たちの研究室では、これらの飛躍的進化の際に確立された細胞制御の枠組みの理解、さらにはそれに基づいた生物制御・物質生産への応用を目指しています。

応微研ジャーナル


 
1955年創刊、67年の歴史をもつ日本オリジナルの微生物学分野の国際誌です(IF 2020/2021 = 1.447)。本誌のChief Editorを2014年3月より田中が担当しております。

微生物研究会


 
主に首都圏の微生物研究者の交流の場として、2004年4月以来、年に1~2回のペースで続けてきた研究集会です。

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